NEUROGENETICS / SMA

成人発症non-5q SMA:LRP12 CGGリピート伸長を8家系中6家系で同定

原因不明だった成人発症non-5q SMAに、新たな遺伝的病因の候補。治療ニュースではなく、遺伝学的診断を広げる研究成果です。

東京大学NCNPnon-5q SMALRP12遺伝学的診断更新 2026.09.29

何が発表されたのか

東京大学医学部附属病院と国立精神・神経医療研究センターなどの共同研究グループは、原因未同定だった成人発症のnon-5q脊髄性筋萎縮症(SMA)の日本人8家系を解析し、6家系でLRP12遺伝子のCGGリピート伸長を同定したと2026年9月28日に発表しました。研究論文はNeurology Geneticsに掲載されています。

5q SMAとnon-5q SMAは同じではない

SMAの多くはSMN1遺伝子の異常を原因とする5q SMAで、核酸医薬、遺伝子治療、低分子薬などが実用化されています。一方、SMN1遺伝子に病的バリアントを認めないnon-5q SMAは遺伝的に多様で、特に成人発症例では原因が特定できないケースが残されています。

8家系中6家系でLRP12のリピート伸長

研究では、5q SMAと球脊髄性筋萎縮症を除外し、既知のSMA・ALS・遺伝性末梢神経障害関連遺伝子にも病的バリアントを認めない成人発症non-5q SMAの8家系を対象に解析しました。RP-PCRで6家系にLRP12のCGGリピート伸長が見つかり、ロングリードシーケンスでは58~92回のリピート数が確認されました。対照1,000例では同変化は2例にとどまりました。

「新しい治療ができた」という発表ではない

今回の成果は遺伝的病因の候補を明確にした診断・病態研究です。LRP12のリピート伸長が見つかった患者に、既存の5q SMA治療が有効であることを示した研究ではありません。また、8家系という限られた集団での報告であり、リピート数と症状の関係や病態機序は、より多くの症例で検証する必要があります。

なぜ一般的な遺伝子検査だけでは見つけにくいのか

リピート伸長は、タンパク質を作らない領域に存在することもあり、一般的なショートリード型の遺伝学的検査では長さや構造を正確に捉えにくい場合があります。本研究では、リピート伸長の検出にRP-PCR、長さの決定にロングリードシーケンスを用いています。原因不明の成人発症下位運動ニューロン疾患では、検査の設計そのものが診断精度に影響する可能性があります。

患者・家族が確認したいポイント

成人になってから緩徐に筋力低下が進み、近位筋優位の筋力低下や筋萎縮があり、SMN1を含む既存の遺伝子検査で原因が分からない場合は、神経内科・遺伝診療の専門施設で再評価の対象となり得ます。ただし、LRP12検査を全例に行うべきという意味ではなく、臨床所見、家族歴、筋電図、既往の遺伝学的検査を踏まえて専門医が判断します。

研究段階:遺伝的病因を示した研究であり、新薬承認・治療法確立のニュースではありません。検査の臨床的な位置づけも今後の検証が必要です。

FAQ

Q. LRP12が見つかればSMAと確定しますか?

今回の研究は強い関連を示しますが、診断は症状、神経学的所見、家族歴、他疾患の除外、遺伝学的検査を総合して行います。

Q. 5q SMAの治療薬が使えますか?

今回の研究は、その有効性を示していません。5q SMAとnon-5q SMAでは病因が異なるため、治療適応は別に判断する必要があります。

Q. 通常の遺伝子パネルで見つかりますか?

リピート伸長は一般的な検査で捉えにくいことがあります。本研究ではRP-PCRとロングリードシーケンスを使用しました。

Q. すぐ臨床検査として受けられますか?

施設によって検査体制が異なります。研究検査と保険診療の検査を混同せず、専門施設に確認する必要があります。

ALS患者由来iPS細胞とMA-5研究 →

ALS針筋電図の診断研究 →

慶應SOD1人工タンパク質研究 →

← 医療情報一覧へ